狩猟による社会貢献・住民の安全を守る・外来種の駆除・有害鳥獣の捕獲
指定管理鳥獣捕獲等事業
狩猟者への鳥獣の捕獲要請が多くなっている。
冬季に行う(登録)狩猟は、従来より主に個人の趣味や娯楽として行われて来ましたが、近年ではニホンジカ・イノシシ等の増加による農林水産業等の被害の増加などにより、年間を通じて、狩猟者への鳥獣の捕獲要請が大変多くなっています。野生鳥獣を捕獲できるのは狩猟者だけです。
狩猟は今や、地域の住民や自然環境、農林水産業などを守る社会的に意義のある活動となっており、「社会貢献活動」でもあると言えます。
近年、市街地にまでヒグマ、ツキノワグマやイノシシ、ニホンジカ、ニホンザルなどが出没しています。人間に危害を加えるおそれがある場合は、地元市町村の要請などにより、猟友会の会員であるハンターが猟銃を手にオレンジのベスト・帽子姿で出動する例が増えています。
これはハンターの義務ではありませんが、これらの動物を猟銃やわなを用いて捕獲できるのは狩猟者だけであり、ボランディア精神のもと地元住民のために協力しているのです。
我が国やその地域にもともとは生息していなかった鳥獣が繁殖し、在来の生物種を駆逐したり、農林水産業被害等を引き起こすなどの「外来種問題」が深刻化しています。 外来鳥獣を根絶又は抑制するためには、積極的に捕獲を図ることが必要であり、平成16年(2004年)には「外来生物法」(特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律)が制定されています。
「特定外来生物」には、狩猟鳥獣では、アライグマ、アメリカミンク、ヌートリア、タイワンリス(クリハラリス)が、非狩猟鳥獣では、マングース、タイワンザル、ニホンジカの在来亜種を除くシカ属、キョン、カナダガン、ガビチョウなどが指定されています。
野生鳥獣による生活環境、農林水産業又は生態系に係る被害が実際に生じているか又はそのおそれがある場合に、主に地元市町村によるクマ類・ニホンジカ・イノシシ・ニホンザル・カワウなどの「有害鳥獣の捕獲」が行われています。
有害鳥獣の捕獲は、厳しい自然条件や危険性のあるの中で、狩猟者の半ばボランティア的な協力の下で実施されているものであり、猟友会の支部等が地元市町村から依頼を受け、猟友会の会員が猟銃やわなにより捕獲を行っている例が大半となっています。
鳥獣による甚大な農林業被害等を軽減させるため、環境省及び農林水産省が平成25年(2013年)に策定した「抜本的な鳥獣捕獲強化対策」においては、ニホンジカ及びイノシシの生息頭数を、10年後の令和5年(2023年)までに半減させる目標を掲げています。また、ニホンザルについては加害群の数の半減、 カワウについては被害を与えるカワウの生息数の半減を目指すとしています。
これらの目標を確実に達成させるための新たな手段として、平成26年(2014年)の鳥獣保護法改正により、「指定管理鳥獣捕獲等事業」「認定鳥獣捕獲等事業者」という新たな制度が創設され、 都道府県による「指定管理鳥獣捕獲等事業実施計画」に基づき、猟友会などの狩猟関係団体・法人が実施主体となり、当事業による捕獲が進められています。
狩猟とは、野生鳥獣を捕まえる営みです。狩猟ができる人(ハンター)は、野生鳥獣に対する深い理解と感謝の念を持ち、とらえた獲物を「いただく」ことをとても大切にします。さらに現在では、ハンターは社会的役割も担うようになってきています。社会的役割とは、増えすぎたシカ等が引き起こす様々な被害(生態系への被害、農作物への被害、人の生活環境への被害)を抑制するために、ハンターがシカ等の生息数を適正に調整することです。
シカは、植物を食べる日本の在来種で、全国で分布を拡大し個体数が増加しています。シカが増えるのは良いことと思うかもしれませんが、全国で生態系や農林業に及ぼす被害が深刻な状況となっています。
樹皮を食べられた木々が枯れ、森林が衰退することで、そこをすみかとする多くの動植物に影響を与える例も見られます。森林をはじめとする植生への影響が深刻な地域は、尾瀬や南アルプスなど日本の生物多様性の屋台骨である国立公園にもおよんでいます。
シカによる樹皮剥ぎの状況。樹幹が一周剥がされると木は枯れてしまいます。
写真:環境省
シカにより植物がほとんどなくなったと考えられる林内の様子(標高約2,800m)。
写真:環境省
イノシシに踏み倒されたイネ。
写真:EAC
シカが増えた要因は、様々なものが関係しているといわれています。
人間と野生鳥獣の適切な関係をこれからも続けていくためには、絶滅のおそれのある鳥獣は積極的に保護し、逆に、シカのように自然環境や人間生活に被害をもたらすほど数が増えた鳥獣は、被害防除を行うとともに、必要に応じてその数を抑制する等の対策が必要です。
シカが、植物などを食べ荒らすのを防ぐために、シカが侵入できないよう柵やネットを設置しています。
写真:EAC
ハンターによる狩猟は、増えすぎたシカなどを適正な数に調整するために役立っています。
写真:北海道立総合研究機構
環境科学研究センター
ハンターは、野生鳥獣に対する深い理解と感謝の念を持ち、とらえた獲物を「いただく」ことをとても大切にします。また、ハンターは、狩猟免許試験に合格して狩猟免許を受けており、猟具(銃器、わな、網)の安全で適切な使用に関する知識と技術を持っています。
くくりわなの設置の様子。
猟具を適切に扱うには、知識と技術が必要です。
写真:EAC
エゾシカロースト。
感謝して美味しくいただきます。
写真:北海道
こうした倫理観、知識、技術を持つハンターが行う狩猟は、野生鳥獣の個体数を適正に維持し、野生鳥獣と人が共存していくために、重要な役割を担っています。一方で、近年ハンターの減少や高齢化が顕著です(狩猟者数は、昭和50年代の50万人以上をピークに、平成22年度は、20万人以下まで減少し、さらに60歳以上が60%以上を占めています)。